デモ参加者への手引:強化横断幕とその使い方

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この手引書ではデモの最中に移動式シールドウォールとして機能し得る強化横断幕の作り方を探求します。

誤解のないよう言っておきますが、私達は横断幕やシールドを使った違法行為を推奨しているわけではありません。歴史家の好奇心を満たすためにこれらのデザインを提供しているだけです。

防御ツールを改良する

私達の街で、アナキストは数カ月にわたり強化横断幕のデザインを改良してきました。私達は、こうした横断幕を使って、警察の暴力から身を守っています。1つの計画の下で何十人もが集まる大規模行動では、大抵、こうした横断幕は攻撃と防御両方の役割を果たしてくれます。

当初、私達は横断幕に木のフレームを使っていました。軽くて固い材木・しっかり握れる金属製のハンドル・木製フレームに張られた防水布というものでした。フレームは頑丈で、3人一組のチームで運ぶことができました。ただ、木材が軽量だとしても、より軽い木材を何種類か試してみても、それでもまだこのデザインでは重すぎました。さらに、他国から来た同志に横断幕は行動で出入りする際に注目を集めすぎると指摘されたのです。彼の出身地では横断幕を折り畳めるとのことでした。もう一つの問題は、フレームを覆っている防水布をキックや警棒で貫通するのはそれほど難しくないという点でした。

テストで満足いく結果を得た新しいデザインには、4つの主な利点があります:(1)軽い、(2)安い、(3)畳める、(4)高密度。

様々な街の同志達が新しいデザインに熱狂的な反応を示したので、私達はこの手引書を作成しました。

シールドと強化横断幕

シールドと強化横断幕を使えば、様々なことを実現できます:

  • ゴム弾・放水銃・催涙スプレー・タックルやパンチから身を守る。
  • 石を投げる・ペンキ入りの消火器を使うといった行動をしている人であれ、純粋に保護や支援を必要としている人であれ、シールドの背後で動いている人々を守る。
  • 着替えや道具の準備など、シールドの後ろで行われている活動を隠す。
  • ぎこちなく危険な取っ組み合いをせずに相手を押し返す堅牢な壁の役目を果たす。
  • 威嚇戦術として機能し、特に参加者が多くのシールドを持っている場合には、敵に恐怖心や不安感を植え付ける。
  • 囮として機能し、危険性の高いツールではないにもかかわらず、警察の注目を集め、警察が気を散らしている間に他の人が行動できるようにする。
  • 同様に、警察は人々を逮捕するよりも、シールドや横断幕を掴み取ろうとすることが多い。1人の同志を引きずり出すよりも、粘着テープとプラスチックで両腕をいっぱいにして立ち去る方が警察にとって望ましいのだ。

強化横断幕に比べて、シールドには軽量で作りやすいという利点があります。誰であれシールドを持っていれば、より機敏に、より自発的に動けるようになります。シールドを持っていても、すぐにシールドを捨てて走り回り、自分の判断で行動できるのです。敏捷性が必要な情況では、シールドが最適かもしれません。

ミャンマーのシールドウォール。

強化横断幕がもたらすのは、その大きさと物理的・組織的力です。横断幕は複数人で持つため、引き裂かれにくく、保護効果が高く、警官は強化横断幕の向こう側にいる人に容易くタックルできません。同じ理由で、強化横断幕から押されると、相手は持ちこたえ難くなります。強化横断幕は、1人だけでなく複数の警官が群衆の中に入るのを阻止できます。このように、群衆は、強化横断幕によって警察との力の均衡を主張できるようになり、明確なコントロール領域を確立できるのです。

私達の街で、数十人の同志達が1つの強化横断幕を前に押し、反対側で数十人の警官が押して、力比べ状態になっているのを見たことがあります。1警官が群衆を攻撃しようとしても、横断幕の後ろからペンキ・石・花火が警官に降り注いでいました。組織的には、数人が横断幕を持っているのを見ると、その周囲で群衆の団結を促し、防御と行動の焦点を創り出すようです。これには、警察が脅迫を使って集団を解散させるのを防ぐという利点があります。特に、警官の数が少なく、解散させるために脅迫以外できない場合は尚更です。

シールド

結局のところ、シールドを使うか強化横断幕を使うかの選択は、闘争に対して対称的アプローチを使うか非対称的アプローチを使うかに依ります。特定エリアを手に入れたり維持したりするために直接的に力比べをすることが目的なのか、それとも、必要に応じて群衆から離れる能力と敏捷性を優先する方が重要なのか?不意打ちに失敗した場合、その後どれだけの時間、正面衝突を維持できなければならないのか?強化横断幕は、警察による多くの行動を防ぐことができるものの、固定された位置を守るため、すぐに別な脆弱性が露呈しかねません。これらの問題に対する答えは、恐らく、行動の性質と場所によって異なるでしょう。一般的な暴動であれば、シールドの方が適しているでしょうが、集中攻撃をしたり、多くの群衆を守ろうとしたりする場合なら、強化横断幕の方が適しているでしょう。

図1

図1は、他のグループがデザインしたシールドです。段ボールをクッションに使い、ゴミ箱を切り取った一部、ロープ・ホース・自転車のチューブを利用しています。2層目のプラスチック(ゴミ箱の蓋)の機能について私達は少々戸惑っています。腕を乗せるクッションであれば、段ボールを使うことをお勧めします。そうしないと、警棒のようなものによる強い衝撃でプラスチックが破損し、手を大怪我するかもしれません。プラスチックの表面は一般に、何らかの衝撃を受けている時に直接触ってよいものではありません。

同様に、転んでシールドの上に落ちたり、シールドにぶつかったりしたりした時のために鋭利な部分を確実に粘着テープで覆っておくようお勧めします。私達の街では、ゴミ箱の一部でシールドを作り、段ボールを粘着テープで厚く巻いてしっかりくっつけ、粘着テープを使ってハンドルも作りました。基本的に、シールドはその辺に転がっているもので簡単に作れます。

2025年6月の米国移民・関税執行局の襲撃に対するデモで使われた即席シールド。

シールドのデザインは情況によって異なる。傘やリーフブロワーのように、シールドが多く集まれば、1つだけではできないことができる。シールドウォールを作ろうとするのなら、自分の体を覆うぐらい大きいシールドが理想的だ。しかし、シールドが大きくなればなるほど、重くてかさばり、持ち運びが難しくなる。小型シールドは軽量で、抗議行動エリアにこっそり持ち込みやすい。多くの人は、シールドウォールを維持する以外の役割を務めている際、小型シールドを持ち歩いている。ちょっとした保護があるだけで、人々が重傷を負わないようにでき、それがなければ維持できないと思われたエリアを維持する自信を持てる。

ポートランドで使われたシールドのデザインに共通しているのは、プラスチックの樽を縦に切って3つか4つの湾曲した長方形にし、樽の上部と下部の円形部分を小型シールド用に取っておく、というものである。

シールドウォールを作る際、各シールドが僅かに重なるよう並べるのが最善だ。ウォールにほんの少し裂け目ができただけでも脆弱になる可能性がある。従って、この特定用途には樽よりもベニヤ板の方が好ましいかもしれない。

-ポートランド抗議行動のツールと戦術

2020年7月、ジョージ゠フロイド叛乱にオークランドが参加して58日目。連邦政府の攻撃に抵抗するポートランドの人々に連帯を表明するイベントでのシールドウォール。映像はサラ゠ベル゠リン

金属製強化横断幕のデザイン

重要:図2では強化横断幕が2つに分かれているように示されていますが、強化横断幕は3つのパネルに分けた方が良いです。より広くカバーできるようになるからです。それぞれのパネルを1人が持ちます。図2で分かるように、それぞれに2つのハンドルがあり、1つは左手用、もう1つは右手用です。各パネルが接する部分に沿って結束バンドで接続し、折り畳めるようにします。横断幕は3人で持てるよう3枚で作るようお勧めします。

図2

指紋:この横断幕を作るために材料に触れる際や横断幕そのものを扱っている時には、手袋を着用した方が良いでしょう。強化横断幕の作成は違法ではないものの、様々な理由から、作成への関与を知られたくないと思うのではないでしょうか。

図3

以下の凡例で図3の7つの要素を説明します。

1.) 金属:工事用仮設フェンスの一部を切り取って金属フレームを作ります。ボルトカッターも使えます。金属は、ネットフェンスのような薄っぺらで曲げやすいものではなく、しっかりしていて軽いものが必要です。切り取るサイズは、およそ高さ1メートル強、長さ75センチ強といったところです。測定する時の目安は、低くしゃがんだ時に金属で体を覆い隠せること・真っ直ぐ立った時に足の一部を覆いつつ金属の後ろに頭を隠せるようにすることです。

求める金属フェンスはこんな感じ。

2.) プラスチック段ボール:私達は、頑丈だが衝撃を吸収してくれるプラスチック段ボールを使っています。ヤードサインによく使われるような類いのものです。丈夫な段ボールでも同じ目的を果たせます。いずれにせよ、金属部分より長さも高さも大きなものが必要です。金属部分の後ろに大きな段ボールを接続すれば、金属が体に当たらないようになります。

プラスチック段ボール。

3.) 結束バンド:結束バンドを使って、プラスチック段ボールや段ボールを金属部分と繋げます。この2層目が金属としっかり固定されていることを確認するのを忘れないようにしてください。

4.) ハンドル:図4に示すように、ハンドルには3つの要素が必要です:(1)スポンジ(2)結束バンド(3)粘着テープ。スポンジは厚く、衝撃に強いものでなければなりません。衝撃から手を保護しつつ、スポンジの上に手を楽に置けなければなりません。プラスチックもしくは段ボールの層に穴を開け、結束バンドでスポンジを金属部分に留めます。スポンジの上下に別な穴を空け、金属に粘着テープを通せるようにします。丈夫なハンドルができるまで粘着テープを何度も編み合わせます。粘着テープのハンドルとスポンジの間に手が入るよう確認を忘れずに。

図4

2つのハンドルを作る:1つは高い位置に、もう1つはその真下に、どちらも水平方向の中央に配置します。これで横断幕を持ち上げられるはずです。

5.) 端を覆う:金属の端を粘着テープで何重にも覆って、万一、横断幕が自分や他人に当たった場合でも怪我のないようにしておきましょう。

上記のステップを3回繰り返し、横断幕のパネルを3つ作ります。

6.) 結束バンドでパネルを接続する:隣接する辺に沿って結束バンドで結んで3つのパネルを互いに接続します。例えば、2人用の横断幕を示す図2の場合、左右のパネルは中央を通る結束バンドで接続されます。結束バンドが蝶番の役割を果たし、横断幕を折り畳めるようになります。

7.) 塗装した防水布:3枚全ての前面に長い防水布を貼り付け、端を横断幕の後ろに巻き付け、結束バンドでしっかり固定します。防水布は強化横断幕の横断幕部分です。スローガンやシンボルなどを防水布に描きます。作業を簡単にするためにスプレーペイントを使うのなら、ステンシルを検討してください。さらに望ましい結果が得られるでしょう。

図5


強化横断幕を使う

横断幕を運ぶグループを結成します。闘争の最前線に立つことになるので、ヘルメットゴーグルマスク・手袋を着用しなければなりません。目標と計画を事前に議論し、互いに共有する具体的な約束事や様々な情況を想定したバックアップ計画を決めておきます。

必要な時に迅速に動けるよう、素早く連絡し意思決定をするための簡略な方法を作っておくことが大切です。行動前にはこの方法を確認しましょう。

横断幕を持つ人達をサポートするチームを作ります。このチームは横断幕を持つ人達を守るために様々なツールを装備することになります。傘もその一例ですが、私達は群衆が横断幕の後ろからレーザーポインター・投射物・ペンキ入り消火器などのツールを使っているのを見たことがあります。

横断幕の端が最大の弱点です。これに対処するには、シールドや傘を持った群衆で横断幕の側面を守るか、あるいは、片側を壁に寄せておいても良いかもしれません。包囲される危険に注意してください。横断幕を持つ人達を安全にしているのは、主に、横断幕の後ろのエリアを支配する群衆です。この群衆が彼等をバックアップしたり、必要であれば、安全な場所に引っ張って行ったりしてくれます。警察は、充分近づくことができれば、横断幕の上部や下部を掴んで引き下ろしたり引っ張り上げたりしようとするかもしれません。機動力を維持し、警察にそのような気を起こさせないようにしましょう。

事前に信頼できる他のグループと慎重に調整し、自分達が強化横断幕を持ち込むと知らせても良いでしょう。自分達の計画が彼等の計画とどのように影響し合うか議論しておきましょう。

事前に目標を特定し、横断幕をいつ・どこで展開するかを議論しておかねばなりません。不意打ちするために、行動する場所に折り畳んで--例えば抗議プラカードの山に見せ掛けて--こっそり持ち込む必要があるかもしれません。

警察は、前もって知っていれば、闘争になりそうな場所に強化横断幕を持った人を立ち入らせないかもしれません。特に厳しい情況の場合、前もってそのエリアに強化横断幕を持ち込み、比較的安全な場所(例えば、使われていない建築現場に隠す)に置いておいたり、デモが始まるのを待って、警察が様々な出来事の対応に奔走している間に横断幕を持って参加したりすることもできます。この横断幕デザインは自転車で運ぶことができるほど軽いのです。

もう1つの戦略的問題は抗議行動のどのエリアに横断幕を設置するか決めるというものです。特に、横断幕を使って注意を逸らしたり、防御したりしようとするのであれば。

必要ならば、横断幕を捨てることを躊躇ってはなりません。私達は通常、行動が終わり解散する時になったら、横断幕を捨てます。横断幕は道具であって、持ち続ける所有物ではないのです。横断幕は人間ではありません。横断幕よりも人を守りましょう。警察が横断幕を回収できず、その構造を分からず、法医学的検査も行えないのが理想的ですが、そのために逮捕されたり、身元を特定されたりする危険を冒すなど無意味です。

世界の他の場所では、金属製ショッピングカートなどの道具の上に作った可動式フロートを試している人達がいます。これは移動式バリケード、あるいは衡角としても機能します。

私達は強化横断幕が定置型バリケード構築の代わりになるとは思っていません。定置型バリケードは、一定エリアにいるより多くの人々を強化横断幕と同じように保護してくれます。

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付録:蜂起に備えよう

2019年のチリ香港の蜂起で、2020年のジョージ゠フロイド叛乱の際にはポートランドなどの都市で、シールドが使われたのを見てきました。そして、アトランタのウィーラウニーの森を守る戦いのような闘争では強化横断幕を目の当たりにしました。

今、社会不安は深まっています。ここに蜂起に向けての激励の言葉をいくつか挙げておきます。

  1. 反乱:反乱は権力側の勢力に対する戦闘的直接行動で成り立っています。この種の街頭行動を選択するのであれば、それに集中しましょう。私達の街では、街頭行動の計画やインフラを標的とする計画をすぐに立案できたはずなのに、騒乱の最中に執筆活動・ソーシャルメディア・大きな会議に集中せざるを得なくなってしまうことがありました。蜂起の際は全てを脇に置いておかねばなりません。蜂起は、私達が生涯を掛けて待ち望んでいた瞬間です。儀式化された抵抗ではなく、私達がどこまで事態を進められるか・この瞬間をどれほど真剣に受け止めているかを示す行動を計画しましょう。

  2. 親近感:自分が既に深く信頼している少人数のグループと共に活動することに集中しましょう。こうした人々は、自分と気が合い、考え・価値観・同程度のリスク許容度をもっているはずです。特に予測不可能なことが起こりそうな情況で、自信をもって協調して行動できるように、計画を立案し、準備するために会合を持ちます。最低でも、朝に簡単な会議をして、昼にツールの準備をして、夜に抗議行動に行くといった具合になるでしょう。団結して、お互いに気を配りましょう。同志を守るために必要なことを行いましょう。蜂起の最中もその前もその後も、相手をどれほど気に掛けているか示しましょう。

  3. 自主組織:真の革命になるために、反乱にはアナキズム思想と社会組織が必要です。いつしか消え去るこうした蜂起の瞬間を最大限に生かすために、短期的優先事項の明快なリストを作成します。気負い過ぎてはいけません。街頭活動以外に時間を取れるなら、プロジェクトを選び、それをしっかりこなしてください。プロジェクトの例には、シールドなどのツール製作・ソーシャルメディア活動・フライヤーの配布・大群衆から離れた小集団による勧誘活動の企画・より大きなグループや連合での行動計画の立案があります。アイディアや戦略を議論する機会を作るために、口コミ・フライヤー・ソーシャルメディアを使って地区住民の集会を呼び掛けることもできるでしょう。人々が出会う機会を開拓し、私達の観点を共有し、読書を広め、政府・ヒエラルキー・資本主義は不要で、自主組織を通じて生活全体を調整できるという自信を築ける場を育むことが重要なのです。


推薦文献:

さらに読むなら:


Thanks to Bakuto Morikawa for the translation.

  1. 例えば、『ローリングサンダー』創刊号の表紙を参照してください。